Formula Nippon Round 1 Suzuka

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1997年 全日本選手権

フォーミュラ・ニッポン第1戦 鈴鹿




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日本一速い男 星野一義 引退


 冬の間しばらくお休みだったレース界も、春の訪れとともにいよいよシーズンが始まりました(本当は、鈴鹿の四輪レースは3月末の全日本GT選手権で開幕してるんだけれど、見に行けなかったので、私にとっては今回が今シーズンの開幕戦ということになります)。
 そんなウキウキした気分の中、レース直前になって飛び込んできたビッグニュースが、「星野一義選手、引退」という情報。星野選手といえば、「日本一速い男」という形容詞が常についてまわり、今年で50歳を迎えるという大ベテランながら、レースでは他の追随を許さないすさまじいまでの集中力で未だに常に優勝候補の筆頭に上げられているドライバーです。昨年も最終戦までチャンピオンを争う元気な走りをしていただけに、誰も「引退」というようなことは全く念頭に置いてなかったのですが、突然の引退宣言にレース界はちょっとしたパニック状態に陥りました。
 引退の理由は、どうやら星野選手が所属するニッサンが、今シーズンR390という怪物マシンを開発して、本気でル・マン24時間レースを勝ちに行くため、その開発テスト等が膨大になり、星野選手が満足できる体制でフォーミュラ・ニッポンに参戦することができなくなってしまったということらしく、みんなが懸念していた「体力の衰え」が原因ということではないようです。
 こうなれば、ぜひともニッサンには今シーズンのル・マンを圧倒的な強さで制覇してもらって、来シーズンはまた星野選手の元気な姿を日本のトップフォーミュラで見たいものです。

 さて、昨年のフォーミュラ・ニッポンでは速さの高木虎之介、うまさの中野信治、ムラっけはあるもののツボにはまればやたらと強い服部尚貴、そしてシーズン中盤から徐々に頭角を現した世界チャンピオンの弟ラルフ・シューマッハ、の4人がまさにしのぎを削る争いを繰り広げ、結局チャンピオンは漁夫の利といった感じでラルフが獲得しました。今年は、この4人の中から中野とラルフがF1へ進出、服部はアメリカへ渡ってインディカーレース出場、となり、高木一人が残った形になりました。高木もまたF1のティレルチームとテストドライバー契約を結んでおり、今シーズンはなんとしても全日本タイトルを獲得して来期はF1のレギュラードライバーの座を手にしたいところです。
 実績あるドライバーとしては、高木が圧倒的に有利なわけですが、これに急遽星野の代役を引き受けることになった黒沢琢哉、昨年の最終戦で悲願の優勝を遂げたスーパーアグリチームの金石勝智、それぞれ新しい体制となり生き生きとした走りを見せている正彦、正美の 影山兄弟らがどう絡んでいくか、さらに、山西康司、脇坂寿一という二人の期待のルーキーがどれだけの速さを見せるか、といったところが今回の見所でした。

 レースは、予選において余裕でポールポジションを獲得した高木がスタートで出遅れ、予選2位に付けていた黒沢がトップに立ちました。スピードでは黒沢を上回るものの、どうしても抜く隙を見つけることのできない高木は、12周のS字コーナーで突如姿勢を乱し、大きくスピン、そのままリタイヤに終わってしまいました。名手高木がこんなミスでレースを失うというのは大変残念なことですが、昨年の開幕戦でも、スタートで前に出られた中野信治をどうしても抜くことができず、結局シケインで無理な追い越しをしようとして両者が接触、リタイヤに終わってしまったということを考えれば、「去年から成長の跡が見られない」という評価をされても止むを得ないでしょう。

 その二人の戦いを後方からじっくり見ていたのがチーム・ノバのペドロ・デ・ラ・ロサ。スペイン出身で95年全日本F3チャンピオンを獲得した実績を持つドライバーだが、正直言って昨年はそれほど注目された選手ではなかった。しかし、今シーズンは名門チーム・ノバのエースの座を獲得し、かなり狙っているのは確か。レース序盤では無理をせずタイヤを温存する作戦が奏功し、中盤で黒沢選手を抜いてからは全く余裕のドライブで見事にフォーミュラ・ニッポン初優勝を飾りました。2位は黒沢、そして3位には光貞秀俊が初表彰台を獲得しました。

1997フォーミュラ・ニッポン 第一戦 レース結果

順位ドライバーチーム
1位ペドロ・デ・ラ・ロサシオノギ・チーム・ノバ
2位黒 沢 琢 哉チーム・インパル
3位光 貞 秀 俊コスモオイル・チーム・セルモ



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 チーム・インパルのエース、カーナンバー19といえば「日本一速い男」星野一義をおいて他にないというのが衆目の一致するところ。なんといってもがむしゃらに勝利を求めてゆくその貪欲さは他のドライバーには真似のできないものでした。その星野が自分のシンボルとも言える「イク(19)」のカーナンバーを託したのは、黒沢琢哉選手。黒沢元治というレース界では誰知らぬものもない往年のスタードライバーを父に持つが、そのレースキャリアには相当な苦労話が伴っています。昨年は高木のチームメイトとしてPIAAカラーのマシンをドライブしていましたが、同チームが今年は山西康司という驚異の新人を起用することからフォーミュラへの参戦はあきらめていたところに、星野の引退という「事件」で急遽代役としての出場が決定しました。
 しかし、この半年間全くフォーミュラを運転しておらず、今回のマシンも1週間ほど前に一回乗っただけというのに、予選2位、決勝でも前半トップに立ちながらもわずかに及ばず2位、というのは素晴らしい結果と言えるでしょう。かつては「和製マンセル」と呼ばれたこともあるドライバーですから、今シーズンはブレイクしてほしいものです。



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 予選の速さは相変わらず一級品とはいえ、レースになるとどうもミスが多いように見えるのが虎之介の欠点と言えるでしょう。「自分は速い」という思い入れが強すぎるのか、とにかく前の車を無闇につっつき回すのが目に付きます。
 それが、結果として派手な追い越しシーンにつながることも多いのですが、同時にクラッシュ、接触といったマイナス面を生むこともしばしばです。クラッシュや接触は下手なドライバーがするものであると考えれば、トラにはまだまだ勉強しなければならないことが多いように思えます。師匠である中嶋悟は、鈴鹿では第一コーナーのアウト側から前走車を抜く「大外刈り」という派手な技を持っていたし、セナやプロスト、シューマッハといった本当のトップドライバー達は「ぶつからずに前の車を抜く」という面で驚異的なひらめきを見せていました。
 一人相撲のクラッシュに終わった今回のレース。トラが本当に世界一を目指すならば、ここは一つ越えなければならない大きな壁なのではないでしょうか。(→ 高木虎之介サポーターズクラブのホームページはこちらです。) 



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 今回のレースで私が個人的に一番注目していたのが、この人、山西康司。鈴鹿サーキットが若手レーサー育成のために開設している「鈴鹿サーキット レーシングスクール フォーミュラ」の一期生で、昨年は四輪レース初出場となった全日本F3選手権で堂々とチャンピオン争いを行ったドライバーです。
 今回は初めてのフォーミュラ・ニッポン参戦ということで、山西の才能がどこまで輝くかということが大変注目されていたのですが、予選9位、決勝ではチーム・ノバの飯田選手の追撃を振り切って5位入賞とまずまずの成績を上げました(普通は19歳の新人がデビューレースで5位に入賞するなんて事はほとんどあり得ないことだから手放しで誉めるのが本当なんでしょうが、山西君の場合、私の評価基準はもっと高いところにあるからね…(^^;)。



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 優勝したのは、冷静に戦況を見つめ、ノーミスで35周を走りきったペドロ・デ・ラ・ロサ。92年イギリス・フォーミュラ・ルノーのチャンピオンですが、レースキャリアとしては95年の全日本F3チャンピオンをはじめとする日本での実績が光っています。
 所属するチーム・ノバはテレビでもお馴染みの森脇さんが監督を務める名門チームですが、そのマネジメントは、外国のどのレースよりもF1に近いと言われています。ペドロとしては、ここで実績を上げて、F1のレース手法を身につけ、あわよくば日本のスポンサーも獲得してF1への進出を狙っていることは間違いないでしょう。
 気がつけば、ビルニューブ、フレンツェン、アーバイン、ハッキネン、R・シューマッハ、ハーバート、サロなど、現役のF1トップドライバーの多くが日本のレースにレギュラードライバーとして参戦していたことが判ります。果たして、今年は誰が世界へ飛び出していくのでしょうか。



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 優勝ペドロ・デ・ラ・ロサ、2位黒沢琢哉、3位光貞秀俊という表彰台の顔ぶれは、昨年までとは少し変わった雰囲気を感じます。ペドロはもう手放しの喜びよう、黒沢はなれないマシンで頑張ったけれども本当はもう一つ上が狙えていたと悔しそうな表情、光貞は初表彰台をもっと喜ぶのかと思ったら以外とクールな反応、と三者三様でした。
 ただ、今回は各チームともマシンの完成が遅れたり、テストが十分にできなかったりとそれぞれ問題を抱えてのレースでしたから、各チーム、ドライバーの実力がきちんと見えてくるのは次のレース(5月17〜18 山口県セントラルパークMINEサーキット)からになるでしょう。





Drivers, Drivers



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 95年全日本F3000チャンピオンの鈴木利男選手。昨年はどうも歯車がうまくかみ合わず苦しいシーズンを送りましたが、今年は新たなチームを結成して心機一転、まき直しを図ります。
 ただ、この日のトークショーではマシンのセッティングがうまくいかないのか、ちょっと暗めの雰囲気でした。結果は8位完走でしたが、利男選手としてはこの程度の成績では全然満足できないでしょう。次戦以降に期待です。



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 鈴木亜久里が監督を務めるチーム・フナイ・スーパーアグリのエース金石勝智。18歳でF3、21歳でF3000へと若くしてステップアップし、将来を嘱望された若手ドライバーだったが、ちょっと歯車がうまく噛み合わなかったようで、これまであまり華やかな活躍を見せることができませんでした。
 それが、昨年スーパーアグリに加入して以来ぐんぐんと成績を伸ばし、昨年の最終戦では見事初優勝を遂げることとなりました。チームの体制も充実し、今シーズンはチャンピオンさえ狙える一に来ていると思います。
 今回は予選でトラブルが発生し、最後尾からのスタートと最悪の条件だったのですが、レースでは生き生きとした走りを見せて7位でゴール。「せめて中段グループからスタートできていたら」とファンを嘆かせたり喜ばせたりのレースでした。



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 今回のレースの一番の収穫といってもいいのが、光貞選手の大活躍でした。
 1990年頃、FJ1600クラスに出場していた頃から注目していたドライバーなんですが、それ以降順調にF3、F3000とステップアップしたものの、決して華やかな活躍があったわけではなく、いつまでも「期待の若手」と呼ばれるままで終わってしまうのではないかと心配していました。
 しかし、今回のレースを見た限りでは体制さえ恵まれれば十分にトップを狙える実力を持っていることを十分に示すことができたようです。



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 中野信治がF1へ行ってしまった後の童夢チームのエースになったのが脇坂寿一。
 茶髪にロンゲと今風のスタイルをしているものの、その実力はフォーミュラ・ニッポンのベテランドライバーをはるかに凌ぐものを持っていると言われています。昨年、全日本F3選手権のタイトルを山西との間で激しく争い、最終戦が中止になったことによるというすっきりしない結末ではあったものの、見事にチャンピオンを獲得しました。
 今シーズンはある意味で山西との間で本当の決着をつけるべき年であると言えますが、残念ながら今回のレースはマシンの不調がたたって予選18位、決勝12位と散々な結果になってしまいました。



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 ラリーの世界ではその昔ミシェル・ムートンという有名な女性ドライバーがいて、性別によるハンデなどは微塵も感じさせない大活躍をしていましたが、ことフォーミュラカーの世界では体力の問題もあってなかなか女性の活躍は見られませんでした。
 そんな中、コスモオイルレーシングチーム・セルモのナンバー2ドライバーとして抜擢されたのが、サーラ・カヴァナ(Sarah Kavanagh)。 アイルランド出身で24歳の彼女は、1995年アイルランド・フォーミュラ・ヴォクスホール選手権チャンピオン、1996年イギリスF2選手権4位入賞2回の堂々たる成績を残しており、今回フォーミュラ・ニッポン初の女性ドライバーになりました。
 結果は、3周遅れの14位完走ということで、完走したことは評価できるものの速さの点では?という感じでした。こんなんで本当に本人が希望するようにF1へ進むことができるのでしょうか?



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 スリランカ出身のディランタ・マラガムワ。昨年はF3選手権に出場し、いよいよ今年は日本のトップ・フォーミュラにステップアップしてきました。
 チームのスポンサーは、なんとスリランカ政府。レース前のピットウォークでは、スリランカの高級紅茶を先着500名にプレゼントしたそうです。肝心の成績は、予選20番手、決勝12周リタイアと残念な結果でしたが、国を背負って参戦しているドライバーだけに今後の活躍を期待したいものです。



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 もはや誰にも「タレントの道楽」とは呼ばせない。今や押しも押されもせぬベテランドライバーとしての地位を確固たるものにした近藤真彦。
 新チームに移籍したものの、ニューマシンの到着が遅れて練習走行やセッティングの詰めが全くできない状態で鈴鹿に乗り込んだマッチは、新車の慣らし運転をしながらの予選アタックを行いました。結果は、チームメイトのラルフ・ファーマン(96年イギリスF3チャンピオン)を抑えて堂々の予選16位。周囲のドライバーの顔ぶれを見れば、この予選結果は素晴らしいものと言えるでしょう。
 決勝レースは残念ながらマシントラブルが出たようで、ピットインしながら懸命の完走を果たしたという結果になってしまいました。「隠れマッチファン」を自称する私としては、今シーズンのマッチにはかなり期待しているんですよ(^^;。



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 ご存じ、ナビコネクション・レーシングチーム監督の舘ひろし。
 去年までは影山正彦、近藤真彦という二人のドライバーを擁していましたが、今年は体制を一新し、影山正美(正彦の弟)、山本勝巳という若いコンビになりました。このチームも、舘監督の道楽かと思っていましたが、案外長続きして、しかも本気で勝ちに行く体制を組んでいるということで、少し監督に対する見方を改めることにします。