ふるさとの伝承
Folk tales around OISHI




弁天さんの餅まき



 由来は不明だが、坂本集落から谷をはさんだ向かいの山の中腹に通称「弁天さん」と呼ばれる弁財天神社が祀られている。
 この社の前には小さな広場があり、毎年11月にはここで餅まきが行われる。



 餅は、地区の集会所で2、3日前についておく。
 当日は、役員が集会所に集まって、簡単な食事をつまみながら酒を飲み景気づけを行う。
 そして、時間がくれば餅を入れた桶を竹竿に結わえ付け、竿を担ぐもの、竿に結びつけた縄を引くもの、さらには途中で休憩するための酒やつまみを運ぶものも加えてにぎやかに道中を開始する。



 酔いが回れば足下もふらつく。
 道を間違えるもの、正しい道へ無理矢理押し戻すもの、それぞれが譲らなければ餅はあらぬ方角へと進んでしまう。まあ、それもまた楽しいもの。



 集会場から弁天さんまでの道のりは2Km弱というところか。
 運び手に酒が入れば歩みの速度はどんどん遅くなる。
 道行きが進むにつれて拾い手も徐々に列に加わり、途中で何度か取られる休憩時には、つまみや酒が次々とふるまわれ、時ならぬ道端での宴席が始まる。



 1時間近くをかけた道行きがようやく弁天さんに到着すると、社に餅を備え、参加者全員で般若心経を唱和する。
 般若心経といえば仏教の経典として知られているが、神仏習合の進んだ現代の日本では神道においてもしばしば用いられる重要な教典なのである。



 いよいよ餅まきの始まり。
 「餅まき」とはいえ、まかれるのは餅だけとは限らない。子ども向けには駄菓子やスナックなどの菓子類も用意されている。



 まかれる餅の中には、「福」「寿」などといった文字が入った縁起物のほか、食紅で番号が描かれた餅も含まれている。
 餅まき終了後、この番号に応じて景品が当たる仕組みになっており、この景品交換も楽しみの一つである。