虫垂炎

「モーチョー」は盲腸と書き、大腸の始まりの部分をいいます。
虫垂はその盲端にぶらさがる豚のしっぽのようなもので、
そのしっぽに炎症をおこした状態が虫垂炎です。
盲腸と虫垂の関係は6.消化器疾患を御覧になって下さい。

それではなぜ世間一般で虫垂炎のことを「モーチョー」というのでしょう?
それは我々外科医側に責任があり、昔(明治〜大正)、虫垂炎で手術をするとなると、かなり進行した状態で行われ、炎症が虫垂だけでなく盲腸にまで及んだ状態でした。
そこで、仕方なく盲腸炎、盲腸周囲炎なる病名を付けていたわけで、その名残が現在の「モーチョー」になったわけです。
5人に一人の傷跡
日本人は統計をとると、5人に一人右下腹部に数cmの傷跡をもつ特殊な人種です。
これは欧米の100倍にあたります。
この理由は、当時の虫垂炎の手術成績は惨憺たるもので死亡率も他国に比べるとかなり高かったようです。
そこで、虫垂炎は早期手術が最善の方法であるという認識が高まり、右下腹部の痛み、即虫垂炎、即手術といった構図が出来てしまったのである。
最近では、早期の虫垂炎(カタル性虫垂炎)は保存的に安全に治癒することが出来るので、ほとんど手術することは無くなりました。
また虫垂炎の病期を含めた正しい診断を行い、手術適応例を正確に判断するのに超音波検査の有用性が注目されています。
参照:
大鐘 稔彦:虫垂炎ー100年の変遷.その臨床と病理.へるす出版,1987
佐々木政一ら:急性虫垂炎治療法の変遷。和歌山医学.44(2),161-172,1993