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まぐろを巡る冒険



表題: 【まぐろを巡る冒険】140

 ▼まぐろ男

 彼は来た。
 きっとそうなんだと思う。
 
 僕達の前に現れたのは,金髪に髪を染めた
 金髪ナカヤマ@ローソン では無く,頭の先から尻尾の
 先まで完璧な『まぐろの縫いぐるみ』を着た男だった。

       尻尾の先までぇ?

 素材は ビニールの様なものだろう。
 ツルツルとした光沢感が本物の マグロの皮膚の
 雰囲気を巧く再現していた。
 
 (作り物の)マグロの顔は始終天井を向いたままで
 その鰓にあたる部分に,中の人間が外部を覗いたり
 音を聴いたり,呼吸をする仕掛けがして有るらしい。
 
 このマグロの不完全なところといえば,歩行の為に
 突き出した 二本の足と,同じく突き出した裸の腕である。
 足の方は タイツの様なモノを穿いているが,腕は
 むき出しである。ご丁寧に腕時計をしている。
 
 やれやれ,念のいった事に 100m 防水の ダイヴァーズだ。
 
 ▼フェミニストなマグロ
 
 彼は...彼と断定するのは,早すぎるか?
 しかし,まぐろ男は紛れもなく 金髪ナカヤマ@ローソン
 である。僕の三ヶ月分の給料を掛けてもいい。
 小豆相場よりは確実だろう
 
 彼は僕たちの方に「えら」を向けると,一瞬動きを止めて
 すぐに軽い会釈をすると,牧場事務局の担当者の方へ
 向かった。
 担当者は既に彼と面識が有るらしく,まったく驚いた様子も
 無く,愛想のいい表情で彼に歩みよった。
 そして彼らは一言二言,言葉を交わすと僕たちの方へ
 会釈して事務局の事務所奥へと姿を消した。
 まぐろ男は,羆牧場にとって上客らしい。
 
 僕たちは暫く口が利けなかった。

 そのウチ,彼女が「さぶいっ」とゆい始め
 僕もなんだか寒気を感じた様な気がした。
 
 羆牧場の玄関脇に コーヒーの自動販売機を並べた
 簡単な喫茶室が有ったのを思い出し,温かい飲み物を
 呑みに行く事にした。
  
                          −第14升−    完

                          mailto:YHG01030@niftyserve.or.jp
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                kishi / Tetsuji Kishimoto   kishi06@IBM.NET

    
    
    

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